「あ……いっぱい来た、いっぱい来た!」
4月16日の朝、埼玉県越谷市の市立新方(にいがた)小学校。机に置いた大型テレビモニターの前で、6年1組担任の吉野学之紀(たかゆき)先生(35)がみるみる笑顔になる。1人、また1人。子どもたちの顔がモニターに映しだされ、25人の顔が並んだ。
「おはようございます。それじゃあ出席を取ります」。吉野先生が名前を呼ぶと、手を挙げて「はい!」と答える子どもたち。きょうだいや父、母と一緒に笑顔を見せる子も。モニター越しに誰かの家から犬の鳴き声が聞こえる。
数人ずつに分かれて「休校中に取り組んだこと」を話し合い、すぐに20分強が過ぎた。タブレットで参加した小島千渚(ちなつ)さん(11)は「友だちや先生の顔が見られて、声が聞ける。うれしいです」。
新型コロナウイルスの感染拡大を受けて休校が続く中、同校が新年度からテスト運用している、テレビ会議システム「Zoom(ズーム)」による「朝の会」だ。支援学級を含め計8クラスの小規模校。校長室と教育相談室にモニターを置き、2クラスずつ実施した。参加率が3割ほどだった初回から、3回目のこの日は約7割に上がった。
オンラインでの子どもと先生のやりとりは、公立小では、熊本市などICT(情報通信技術)機器の導入が進む限られた地域を除くとまだ珍しい。
学校独自の取り組みを始めたのは、4月に赴任した田畑栄一校長だ。赴任前から、子どもが新担任と顔を合わす機会が始業式だけになることを案じていた。「子どもが元気に過ごしているか確認する手段が必要だ。担任の教師と接する機会も作ってあげないと」
オンラインで「朝の会」ができないか。Zoomを利用したことがあったため、そう思ったが、周囲では例がない。早期実現は難しそうだと考えていたら、タイミング良く、推進役になりうる人物が現れた。
吉野先生だ。休職して1年、埼…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル